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『月刊マクロビオティック』おすすめ記事

コラム:桜沢如一のコトバに学ぶ

「食育の原典」
日本CI協会刊「マクロビオティック誌」連載
2016年10月号掲載(第73回目)
寺子屋TAO塾代表 波多野毅

「教育家諸君〜一体全体、教育とは何だ? 難しい理屈は抜きにして、要するにそれは、幸福に生きる道を教えることだろう。それならば、先ず第一に『我らは何を食うべきか』『如何に生きるべきか』を教えるべきではないか。諸君の生徒がもし病気をすれば、諸君の教育が、観念、概念ばかりの骸骨の様な教育であって本当に『如何に生きるべきか』『何を食うべきか』を教えていないのだ。いや『いかに病むべきか』の教育なのだ。」(「食物と人生」)

圧倒的な国力の差を持つアメリカをはじめ、欧米列強の圧力によって半ば強制的に開国させられ、不平等条約を締結された日本の明治新政府は、富国強兵・殖産興業の目標を掲げ、新時代にふさわしい教育制度をつくり、優れた人材を育成することで先進国に追いつこうとした。そこで掲げられた教育の3本柱がイギリスの哲学者・社会学者ハーバート・スペンサーの教育論由来の「知育・徳育・体育」。

西洋文化の大きな波が食生活にも及び、科学的栄養論を後ろ盾とした西洋風の食習慣の流入が進んだ時代、桜沢が師と仰ぐ石塚左玄は、急速に広まる動物食に疑義を呈し、薬に頼らず玄米と野菜を食べることを薦め、『通俗食物養生法』という本の中で、「今日、学童を持つ人は、体育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき」と記述した。これぞ、昨今、とみに叫ばれる「食育」という言葉の著書における初出である。

2005年に食育基本法が制定されて以来、全国各地で「食育」をテーマにした様々な取り組みがなされ、フードマイレージやバーチャルウォーターなどの最先端の概念で食と環境の関係性を理解する動きも進んできている。しかしながら、中には大手のハンバーガーチェーンが食育サイトを立ち上げ、学校で授業するといったものまであり、野放しの玉石混淆状態であることは否めない。

今こそ、「食育」の原点に立ち返りたい。桜沢は「左玄は、藤樹以来はじめての明治第一の聖人」と賞賛し彼の伝記を書いている。情報が氾濫する現代社会、やはり「真実は原典にあたれ!」である。

波多野 毅

波多野 毅 /はたの たけし
(一般社団法人TAO塾代表理事・熊本大学大学院特別講師)


1962年熊本県生まれ。
一般社団法人TAO塾代表。修士論文のテーマは「食の構造的暴力と身土不二の平和論」。現在、熊本大学紛争解決平和構築学研究室客員研究員。鍼灸学生時代、日本CI協会、正食協会にてマクロビオティックを学び、93年Kushi Institute勤務。笑いながら東洋医学の哲学を学べるエデュテイメントを展開中。著書に「医食農同源の論理」「自遊人の羅針盤」など。

※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。