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『月刊マクロビオティック』おすすめ記事
コラム:桜沢如一のコトバに学ぶ
「悲しみは幸せのダイヤモンドの鉱脈」
日本CI協会刊「マクロビオティック誌」連載
2015年6月号掲載(第57回目)
寺子屋TAO塾代表 波多野毅
「カナシミから力が生まれた! この力がいかに大きいモノであるか!それを君はすぐ見る事ができます。
カナシミから生まれた力でなければ大きい事は出来ない!!イカリや、ネタミや、ニクシミから生まれた力は
一時的でよわいモノだ。カナシミから生まれた力のみがヨロコビを生むのだ。イカリから生まれた力はハカイを生む。ネタミから生まれた力はクヤミを生む。ニクシミから生まれた力はナゲキを増すばかりである。
それにしてもフリップの母の教えは何という素晴しいものだ。」
「フリップ物語解説」
湯川秀樹博士が日本人として初の
ノーベル賞を受賞し、戦後生きるこ
とがやっとであった日本人たちに多
くの勇気や感動を与えたその年、桜
沢は、ウェズレー・デニス著の絵本
「フリップ物語」の翻訳本と共に、それよりも大幅に頁数の多い解説本を
同時に出版している。
当時、原作者は馬の絵を描き、多くの絵本や挿絵で活躍していた人で、この本でもアメリカ・ケンタッキーで生まれた子馬を主人公にしている。
母馬のように川を跳び越えたいと思い一人で練習を重ね、ついには跳べるようになるまでを美しい馬の絵と共に描いている。
桜沢は、この解説書の中で困難を楽しい遊びとする子馬の冒険心を讃えるとともに、母馬の甘えを助長しない真の教育姿勢に注目する。「母は決して子を助けてはいけない! 母は決して何事も教えてはいけない!ただやって見せるだけ! ソレだけ!子供を困らせる、当惑させる、羨ませる、ただソレだけでいい。見せつけるだけでよろしい。」と、凛とした母親像を自身の体験をオーバーラップさせて力説する。
「苦しさは喜びの泉、恐れは自由の世界の門、そして悲しみは幸せのダイヤモンドの鉱脈」と断言できるのはPU精神の真骨頂であろう。桜沢の翻訳には多少誇張された表現や感嘆詞が散見され、全体的に感情的になっていると批判する学者の声もあるが、精神に洞察を持たない逐字的直訳にはない魅力がある。桜沢訳で200版を超えたカレル「人間」に同様の解説書を書いている。桜沢の熱い意訳に触れてみるのもまた一興。
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波多野 毅 /はたの たけし
(一般社団法人TAO塾代表理事・熊本大学大学院特別講師)
1962年熊本県生まれ。
一般社団法人TAO塾代表。修士論文のテーマは「食の構造的暴力と身土不二の平和論」。現在、熊本大学紛争解決平和構築学研究室客員研究員。鍼灸学生時代、日本CI協会、正食協会にてマクロビオティックを学び、93年Kushi Institute勤務。笑いながら東洋医学の哲学を学べるエデュテイメントを展開中。著書に「医食農同源の論理」「自遊人の羅針盤」など。
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※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。