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『月刊マクロビオティック』6月号おすすめ記事

歯科医師・整体師 田中宏尚氏に聞く
「歯の宮大工」の方程式 歯科治療×整体=健康なカラダ
東京・日本橋にある「銭洗い弁天様」で有名な小網(こあみ)神社のすぐ近くに歯の宮大工、田中宏尚先生の歯科クリニック「歯科・かみあわせ矯正・日本橋」があります。「歯の宮大工」とは聞き慣れないかも知れませんが、神社や仏閣を手掛ける職人の「宮大工」はご存知でしょう。宮大工は伝統建築を長く守るために精巧で繊細な工法をしています。歯科治療においても噛み合わせをよくすることは宮大工のそれと似ています。ただ単に削って合わせるのではなく、体全体の骨格の歪みやずれなどを正しく調整してから歯の噛み合わせを正しいものにしていく。そしてその結果、ピタッと合う瞬間、それこそが「歯の宮大工」の真骨頂だと田中先生は言います。
体の歪みはまさに生活習慣の表れと言えます。その生活習慣には食生活も含まれ、よく噛むことにもつながります。今回は「歯の宮大工」、田中宏尚先生にお話を伺いました。
編集部
噛み合わせと体のバランス
編集部:田中先生、噛み合わせが良い、悪いとはどのようなことなのでしょうか?
田中宏尚先生(以下、田中): 乳歯も永久歯も臼歯(きゅうし)が生えてきたときに山と谷、凸凹があります。左の写真で見ると、左右上下の臼歯にそれぞれ青い点があります。治療をするときには上下左右と、立体的に診ながら青い点同士が合わさるようにします。これが噛み合わせの回復治療です。この噛み合わせは脳神経にも影響を及ぼすので噛み合わせがうまくいかないと不定愁訴(ふていしゅうそ) (明確な原因がない肩こり・目まい・腰痛などの体の不調)などの原因にもなります。
編集部:臼歯がお互いにきっちりはまるということなのでしょうか?
田中:噛み合わせが悪いと、骨がねじれながら、関節がズレながら、その「ズレ」の分だけ体全体で帳尻を合わせようとします。首がどちらかに傾いている人や、目や耳の位置が左右対称でない場合などは、長い間、噛み合わせがよくない結果の表れと言えます。歪むことで噛み合わせを無理に合わせている状態です。それを分かりやすくしたのが「だるま落とし理論」です。

西洋医学にはない「歪み」という概念をモデル化した
「だるま落とし理論」
田中:体の歪みと顎の関係を最も分かりやすくしたのが、当院の「だるま落とし理論」です。
下のだるまの写真を見比べてください。見たところ@もAも、向かって右側にずれています。顎( 頭)の部分だけを見ると、@は左にずれ、Aは右にずれています。これを一つ下の赤い積み木に合わせるとどうなるでしょうか。Aは重心が確保される方向に力が働きます。一方、@は逆に重心がずれて崩壊する方向に力が働きます。
咬合(こうごう)調整もこれと同じで、首から上だけを見て噛み合わせを整えても、そのままでは体全体の歪みがなくなるわけではありません。そのため噛み合わせにより違和感を感じるようになったり、悪くすると首の痺れや肩のこりなどの不定愁訴が表れるようになる可能性が出てくるのです。

編集部:こうやって実際に見てみると体の軸のアンバランスさがわかりやすいですね。
田中:「だるま落とし理論」は視覚的に分かりやすいので私はよく使います。それぞれのパーツの部分が歪んでいくと、どこかの時点で軸がなくなりバランスを失って崩れます。それを防ぐために体はなんとかバランスをとろうとします。その修正があっちにいったりこっちにいったりして歪みが出る。今の現代人は真っすぐな完璧な人はいませんから、程度の差はあれ前後左右に歪んでいながらバランスをとっています。
編集部:そうですね。前後左右、多少の差はあれ、どこかは歪んでいるということですね。
田中:食物を食べるとき、右で噛む人、左で噛む人、それぞれありますが、それも偏りですからどこか歪んでいます。でも、それはその人に合った噛み方だから無理に逆で噛む必要はありません。逆に慣れない方で無理に噛むと、より歪みが大きくなるかもしれません。そういったところは普通の歯医者さんでは分かりませんから注意が必要です。 なぜ噛みやすい方で噛むのか?それは負担が少ないし、楽な方だからですが、その原因を探らなくてはなりません。それは歯だけを見ていてもわからない。顎や頭蓋骨、全身の骨格を診て、その人の癖を確認して総合的に判断していかないと。その判断なしに歯を削ることを優先するのは危険です。その場だけ良くなっても後で不具合が出てくることはよくあることです。レントゲンだけみて調整することは早合点すぎます。

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