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『月刊マクロビオティック』11月号おすすめ記事

 

『「おいしさ」の科学』佐藤成美氏に聞く

いつまでもおいしく味わうためには健康でいることが一番

 

 佐藤成美先生の著書『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)は、食品の中でおいしさはどうやって生まれるのか、おいしさを生み出すためにどんな技術が開発されているのか、おいしさを科学ではどう説明するのかという3つの視点で紹介しています。科学が進み、今まで見えなかったミクロの世界が分子レベルまでわかるようになってきた現代。「おいしさ」とは何かを改めて考え、新しい発見をこの本を通して学ぶことができます。
 今回は著書の佐藤成美先生に当協会までお越しいただき、料理教室を見学していただきました。マクロビオティック料理も実際に味わっていただき、講義や調理実習の感想とともに、「おいしさとは何か?」を伺いました。

編集部

 

食品の3つの機能

 

編集部:佐藤先生が『「おいしさ」の科学』を執筆されたきっかけをお聞かせください。

佐藤成美先生( 以下、佐藤): 私がオーガナイザーを務めた化学フェスタ公開講座「化学と食」で、大学の研究者や企業の開発担当者などがそれぞれの立場から「おいしい」を話していただいたことがきっかけです。どの講演もとても興味深いものでしたから。「これは面白い。もっと分かりやすい表現にして、みなさんに知って欲しい」と思い、筆をとることにしました。講談社編集部の勧めもあり、さらに取材を重ねて内容を広げました。

編集部:本日、マクロビオティック料理教室を見学された感想はいかがでしょうか?

佐藤:いろいろな穀物や野菜を使って、よく工夫されているなと感じました。料理は何をどのように調理するかですが、よく考えられていますね。お味もとても美味しかったです。

編集部:それはよかったです。今日は穀物を主体にした講義でした。

佐藤:食品には3つの機能があると言われています。一次機能は栄養面での機能です。栄養がなければ生命を維持できませんね。二次機能は嗜好面での機能です。これは美味しさのことです。そして三次機能、体の機能を調節する機能が今、注目されています。科学が進んできたことでビタミンやミネラルなど微量成分のことがだんだんと分かってきたためです。国も「トクホ( 特定保健用食品)」などの制度を作りました。

編集部:ビタミンやミネラルは種類が多くてとても覚えることはできません。

佐藤:ミクロの世界まで見えるようになって、多くの栄養素が見つかっています。ビタミンはAとかCとかいろいろありますが、これは見つかった順番にAから文字を振っているだけです。ビタミンCは正式にはアスコルビン酸といいますが、一般的には現在もビタミンCと呼んでいます。

編集部:科学が進んでいろいろな栄養素が見つかり、機能性が特筆され、それだけを摂る傾向にありますが、マクロビオティックではホールフードでいただくということを大切にしています。

佐藤:食べ物にはいろいろな成分が含まれていますよね。まだまだこれからも新しい発見が出てくることでしょう。
 サプリメントは一部分だけの栄養素しか含んでいないので、いろいろな食べ物を摂ることが、よりよいことだと思います。

 

インターネットの情報

 

編集部:佐藤先生は農学博士であり、サイエンスライターとして多く記事を書いていらっしゃいますね。現代においては、調べたいことはインターネットですぐに情報を入手できますが、その情報がはたして正しいのかどうか判断するのは困難ですね。

佐藤:インターネットの情報は正しいものも正しくないものも混ざっています。それに対し、書籍を発行するということは、出版社や関係者といった多くの方々の目を通して出来上がりますから、その過程で誤ったことがあれば精査されていきます。しかし、ブログなどを含め、インターネットの世界ではその人個人だけの権限で公開されるものも含んでいます。ですから、その情報が正確かどうかを見極める必要があります。今、流行の糖質制限も、本当に必要な方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの情報は怪しいものです。科学者ならみな分かっていることです。
  私自身が体験した面白い話があります。一時期、酵素ダイエットが流行したとき、私が教えている学生に試験で酵素についての問題を出したことがありました。学生の誤った答えの多くはみな同じで、インターネットで調べたものだとすぐに分かりました。私が教えたことを理解していないことは残念でしたが、逆の面からみると学生がみんな同じ答えを出すのが面白く思え、インターネットで言われていることを列挙して情報を共有することにしました。それが図1です。インターネットを鵜呑みにしてはいけない、良い例だと思います。

編集部:( 図1を見て)この情報は正しいものだと信じてしまいそうです。×印がついているということは間違った情報なのですね。

佐藤:酵素がよいといって食べ物から摂り入れても体内で分解されてしまいます。そうすると、期待するような酵素の機能はなくなります。

 

 

「おいしい」ということの重要性

 

編集部:酵素について新しい学びをいただきました。さて、おいしさの科学の本題に入らせていただきます。著書を読ませていただき、一番お聞きしたかったのは味蕾(み らい)の働きです。味を感じる仕組みを教えてください。

佐藤:私たちは舌で味を感じ、情報を受け取ります。食べ物を食べると味物質が唾液に溶けて混ざり、舌の表面にある味蕾に入ります。味物質は味蕾にある味細胞(みさいぼう)の集まりである味蕾の受容体に作用し、大脳に伝えられ味を判断するのです。その味を甘味、塩味、うま味、酸味、苦味の「五味」、または「基本味」と呼んでいます。

編集部:辛味や渋味は基本味ではないのですか?

佐藤:辛味や渋味は感じるメカニズムが違います。辛味の受容体は味蕾に存在せず、痛いに近い感覚です。これを
収斂味(しゅうれんみ)( =味覚の神経細胞を刺激すること)と言います。辛味や渋味は感覚味蕾では別の終末神経を刺激するので基本味には含まれません。

編集部:甘味は舌の先で、苦味は舌の奥で感じるなど、舌の場所でそれぞれの味を感じると思っていましたが、味
蕾ひとつで五つの基本味を判断しているのですね。

佐藤:最近のマウスを使った研究では、脂質の味も受容していることが解りました。もしかしたら、近いうちに脂肪の
味が第6の味になるかもしれませんね。

編集部:どんどん解明されていきますね。うま味も発見されたこと自体、すごいことだと思います。コクとか、深みとか
繊細な感覚のような気がします。

佐藤:日本人はカツオブシや昆布などで出汁をとり調理してきたので、うま味は馴染み深い味です。世界を見ても、野菜や肉のうま味を上手に使っている食文化がありますから、その土地ごとのうま味が受け継がれています。それでもうま味は世界共通の言語で「umami 」と言いますから和食の文化からきているのでしょうね。

編集部:うま味は世界共通の言葉なのですね。

佐藤:最近、私はトマトにもうま味を楽しんで感じています。トマトは酸味や甘味が強いですが、グルタミン酸のようなうま味成分も多く含んでいます。実際、化学分析してもうま味がしっかりあるのです。ドレッシングをかけるとわかりませんが、生でトマトを食べると感じると思います。

編集部:確かにそうですね。イタリア産のトマトなどは加熱するとおいしくなる品種がありますね。

佐藤:私たち日本人が味噌や醤油のうま味を楽しむように、イタリアではトマトを乾燥させたり、煮込んだりとソースにしてうま味として楽しんでいますよね。このように、世界各地でバラエティに富んだうま味があるのです。

編集部:うま味も含めて基本味は味蕾で感じる、受容するとお聞きしました。実際に、味蕾が味を判断しているので
しょうか?

佐藤:味蕾が受容して、脳で味を判断しています。つまり「おいしい」とは脳で起こる感覚なのです。その仕組みを簡単にいうと、最初は本能的に味を判断します。そしてその脳の先の脳の別な場所でその味がおいしいとか、お母さんの味だとか、故郷の味だとかと判断するわけです。

編集部:本能的に味を判断するというのはどういうことなのでしょうか?

佐藤:赤ちゃんは経験則もないので本能で味を判断するしかありません。甘さは大好きですが苦味は嫌がります。甘さは一番本能的においしいに近い味なのではないでしょうか。大人が苦コーヒーを好んで飲むのは、コーヒーの苦さは経験則を積んで体に安全だと知っているからです。そうすると新たな味覚として進化していくのです。
人間を含め、動物にとって一番大事なのは、食べたものが安全かどうかです。今でさえ味覚はおいしさの判断かもしれませんが、もともとは食べてよいかどうかを判断するものだったと思います。
大昔、まだ火を使っていない時代、ヒトは手に入れた木の実や獲物などを食べてよいかどうかの判断が必要でした。どんな植物でも自分を守るための毒を持っています。そういうものを食べたら死にかかわりますからね。今は食べやすいように品種改良が進みましたが、昔は食べることは命がけの行為だったのです。特に、苦味は毒素を、酸味は腐敗を知らせる味ですから、わずかな味でも敏感に感じ取ることができるのです。

編集部:味覚はまず食べてよいかどうかの判断から始まったのですね。

佐藤:食べてよいかの判断は味覚だけではありません。視覚も大切です。目の前に青いものと赤いものがあったらどちらを選びますか?

編集部:赤いものがおいしそうです。

佐藤:これは、人類共通の感覚です。視覚のほかにも、においも重要です。つまり、五感を使って食べ物を判断しているのです。口に入れるのは最終手段ですが、毒素や腐敗を味で感じると吐き出すこともできます。そうやって長い時を経て、生きていくためにどんなものを食べたらよいかという感覚が発達してきました。
だからといって、どんなものでもいいという訳ではありません。「おいしい」ということが重要なのです。
味は本能的に感じるものと経験で判断する味があります。甘味は本能的なものです。それを積み重ねると経験則
ができます。経験則は人種、国、環境、宗教などにより違いがあります。私たち日本人から他の国の食べ物をみると
「それも食べるの?」と思うこともありますし、海外の人たちから私たち日本人の食べるものをみると同じことを思う人もいるでしょう。それぞれの国や環境においておいしいという感覚が発達してきたのです。

 

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