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『月刊マクロビオティック』4月号おすすめ記事

味覚と健康〜感性で味わう大切さ〜【前編】

学習院女子大学 教授 品川明 × 日本CI協会会長 勝又靖彦

 5月に開催する「第9回 マクロビオティック医学シンポジウム」でご講演いただく学習院女子大学 品川明教
授と当協会会長 勝又靖彦の対談を、梅の花が咲き始めた2月、学習院女子大学のキャンパスにお招きいただ
き行いました。
 まず勝又より、昨年11月に開催した第8回シンポジウム「マクロビオティックと新栄養学」の報告と、その背景である2013年の女子栄養大学による「菜食と健康」についてをご説明し、対談へと進みました。

 

味わい教育

品川明教授(以下、品川):2013年頃は、自身の活動を「味覚教育」と言っていましたが、現在は「味わい教育」と呼んでいます。やはり「味覚」と「味わう」では全然違うと思い、味わうことを通して見えない部分が見えてくるように、体感するという視点を強く入れよう、ということで「味わい教育」に変更しました。
 舌だけではなく体感を通して味わうことで、見えないもの、生き物の物語なども含めて見えてきて、おかげさま的要素も付いてくる。それが味わい教育です。知性だけで考えると疲れてしまうのですが、感性を伴うとあまり疲れません。感性を大切にするというのは頭を回転させるのではなく、自然に頭が回転してくるというイメージです。
 無理やり入れようとしない、自然に入ってくるものを咀嚼するので頭が回転する。その結果出てくるのが本来の知性ではないかと思っていて、感性を伴わない知性はあまり重みがないですね。受け売りの言葉で感動することも確かにありますが、感性で得たものは一生もので、そこからの言葉は重みがあって説得力があると思います。

勝又会長(以下、勝又):本来、人間は知らないことを知るのが一番楽しいことですよね。それが今の教育では、苦痛でつまらなくなっているのかも知れませんね。
 要するに、人間の六感でいえば知識だけに特化してしまって、他の五感が忘れられています。全身で受け止めて楽しくなるわけですから、それを部分だけ押し付けられたら誰でも嫌になってしまいますね。知性教育を否定しているわけではないですが、知性教育をカバーする感性教育がないことに問題があると思うのです。
 好奇心を掻き立てたり、物語がわかってくると、楽しくなったりしますよね。感性教育による裏づけがあれば文法も面白くなってきますよね。

品川:まさにその通りで、学問自体がつまらなくなっていますね。味わい教育で行っている試験には穴埋めや記述もあるのですが「何故そういう答えを導いたか」という視点を大切にしています。ただペーパーテストの○×で60点以上、という試験ではないです。ペーパーテストは繋がりがないと思っています。
 例えば、食物の話をするとしたら、食品学や栄養学、生物学、化学、社会学、文学、心理学、医学や薬学もありますが、一つの食べ物を見た時に、それらの学問で横断的な、その食べ物から派生する知識、知的な関連付けがほとんどないですね。もともと勉強していたとしたら、勉強した内容がどう食べ物に派生しているか、という視点が極めて少なくて、断片的にしか食べ物を理解しない人が多いですね。
 何故味を感じるのか、ということを考えた時に「味を感じる受容器がある」というのは、どちらかというと生理学ですが答えになっていないのです。
 科学的に、物理的に味を感じる要素を話せる人は少ないです。
 五大栄養素に炭水化物があります。皆さんにも聞き馴染みがあると思いますが、栄養学や料理をやっている人は知っていますが、具体的な成分名を言える人はあまりいないのです。デンプンという言葉が出てこないですし、デンプンと砂糖が糖質として同じ類のものと理解している人も少ないのです。デンプンはジャガイモなどに含まれていて、そのまま舐めると粉っぽくて味がないのですが、砂糖や麦芽糖は味がありますよね。同じ類なのに何故差があるのか、ということを不思議に思っている人はわずかしかいないですね。それが高分子であるとか、低分子であるとか、唾液によって分解されるとか、そのような認識で食べ物を話せる人というのは、料理研究家であっても少ないですね。
 ですから、味を付与して食べるのに適した美味しさを提供するのは間違いではないですが、色々な物語とか、何故こうなっているのか、我々の体の中で吸収されるとかしないとか、食べるということは体感できる要素だと思うのです。

 

知性教育と感性教育

勝又:今の学問は知性学問で、分析学問ですよね。ビタミンB1とかCとかは体感しようがないですよね。そこにドラマも感動もなくて、そればっかり朝から晩まで押し付けられたら嫌になってきますね。知性的な学問に興味を持たせるには、感性教育の中で「たんぱく質はこうだよ」と教えてあげたら良いですよね。

品川:本当にそうです。

勝又:知性的な知識教育に特化して頭が良くなればいいのですが、いい大学に入るのは知性教育をしていなかった人で、一生懸命知識を覚えるのに努力した人はあまりいい大学に入れてないですよね。それが現実ですよね。
 学習塾で「東大に○人入りました」とか言っていますが、模試を受けるために一日だけ通ったという人も含まれていますからウソですよね。しかも、下宿代まで払って成績のいい人を集めて、合格率のパーセントを良く見せて人を集めて、それで集まった人はいい大学には入れないのですよ。まさに日本の教育は受験産業に乗っ取られていて、医療が製薬会社に乗っ取られているのと同じだと思うのです。
 医療も、メディカルケアとヘルスケアは、分けて考えるべきだろうと思うのです。今の栄養学もメディカルケアなのです。「鉄分が足りない」というと「すぐに摂りなさい」という医療で肝心のヘルスケアがないのです。
 ヘルスケアは、昔の日本語で言えば養生法で、要するに健康増進です。
 それが世界的にないのです。マクロビオティックというのはまさにヘルスケアなのです。
 今、当協会では料理教室しかありませんが、ヘルスケアとして、陰陽の原理などを取り入れた学校にしていきたいと思っているのです。

品川:そういう学校ができたらすごく良いですね。料理でその視点はすごく大切だと思うのです。料理も変わっ
てくる気がしますね。
 それから、知識教育も大切な要素ではありますが、感性教育の中で対応することの重要さを示さないといけないと思います。押し付け教育が多い中で自分が自覚したことが何なのか、ということを、授業の中で持っていけることができたら素晴らしいことだと思いますし、自ずから好奇心が湧いてきて進歩していきますね。食べ物って単調ではないのですよね。多様な味を発揮する食べ物はたくさんあるのですが、それを楽しめないのは好奇心がないからなのかもしれません。好奇心を付与するためにも「味わう」という視点は大切で、味覚を育てるのも味わうことが重要だか
らです。すべての五感が研ぎ澄まされるのが重要で、味覚はその一部でしかありません。その多様な味わいは、触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚の五感に加えて、さらに意識や感動などがあって、はじめて食べ物を食べたという実感が湧くことが本来の食べ方なのです。その中で、口の中でしか味わえないのが「味覚」なのです。
 以前、自然観察の教育を受けた時に指導員の方が解説されるのですが、メモを取っている方がいたので「メモを取ってどう活用するのですか?」と言って怒られたことがあるのです。
 そういう知識を持っている人は、知識を提供してしまうのですね。知識を持っている人の悪いところは、押してしまって引き出せないところです。

勝又:教えたくなってしまうのですね。

品川:そうなのです。教えることがいかに毒であるか、という視点を持っていないといけないのが教育者や指導者であると思っています。学ぼうとする意欲や好奇心を削いでしまいますね。自分がそうだったのに、自ら体得したのに、人に味わせることができない。それが本当の教育者や指導者と言えるかどうか。
 本当の指導者は教える要素もあるのですが、どちらかというと、私は山本五十六(太平洋戦争で連合艦隊司令長官を務めた海軍軍人)の言葉にもっと輪をかけて、自分で会得したときの喜びの方を称賛してあげた方が良いと思っています。ぜひ、私も協力させてください。

山本五十六の名言
『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』

勝又:ぜひ、お願いします。以前メザシの解剖についてお話いただいたことがありますが、今度、大根を解剖する授業をやってみたいと思っていたのです。切り方だけではなく、首の部分や先の部分ではどう味が違うのかなど、色々な感性を育成する授業内容が考えられると思うので、ぜひご協力をよろしくお願いします。

 

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MAYA

品川 明(しながわ あきら)
1955年生まれ。東京大学大学院修了 農学博士。専門分野:味わい教育(フードコンシャ
スネス論)、環境教育、水圏生物化学・生理生態学。食べ物(命:生物)と接するとき、自分の感性(五感力)を鍛えるとともに、食べ物の味わい方やその背景を知ることが大切である。あらゆる世代に必要な楽しくて美味しい味わい教育を実施し、食物の大切さや本来の価値を認識し、生き物の命や生き物が生息している環境を大切にする人を育てることを目標としている。日本やアジアの食文化を支える魚介類や魚醤などのうま味成分について研究。また、食(生き物)を通じた人と生物と環境との繋がりを研究し、その事実や発見を食教育に応用する教育手法を研究。


※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。