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『月刊マクロビオティック』6月号おすすめ記事

前号に引き続き、川嶋朗先生のマクロビオティッ
クセミナーレポート第二弾をご紹介いたします。
5月号では「風邪の常識」について紹介しました
が、今号では現代の医療の問題や患者の意識の問題を紹介します。
マクロビオティックについての川嶋先生の考えも大変興味深いものでした。
お任せ医療とイクスキューズ医療
「お任せ医療」とは、患者さんが医者に頼り切って依存することです。「先生にお任せします」「体のことは難しくてわかりません。どうしたらいいでしょう?」という言葉をよく聞きます。「イクスキューズ医療」とは、ある意味、責任回避を指します。
「再発しないとは限りません」「可能性は否定できません」「治ることはありません」「治療は生涯継続です」などの言葉です。
風邪に「抗生物質」というのも医者のイクスキューズです。肺炎などの細菌感染を風邪と誤診したら訴えられるので念のための抗生物質です。頭痛の患者さんで、脳腫瘍や脳血管障害の疑いがほとんどないのに行うCTやMRIといった画像診断などもイクスキューズ医療です。
メタボ検診は即刻廃止
平成17、18年頃からメタボ検診が
始まりました。厚生労働省は検診することで医療費を兆単位で減らすと宣言しました。
現在、医療費は減っているでしょ
うか? その逆でどんどん増えてい
ます。メタボ検診は即刻廃止すべき
だと思います。
平成23年度の医療費は38.5兆円、介護費や生活保護費を含めると47兆円になります。対してその年の税収は42兆円です。つまり、税収を医療関連の支出が上回っているのです。
個々の家庭に置き換えると、42万円の給料で病気や介護に支払うお金が47万円。生活に必要な経費はすべて借金です。こんな家庭は存在しないはずです。ところ日本という
国は違うのです。
42万円の給料すべてを医者につぎ込み、自分たちの食費や光熱費などの生活に必要なお金は全部子どものクレジットカードで支払いをしているようなものなのです。これが日本の現状です。こんなことを続けていたら、到底赤字国債など減ることはありません。
いつか日本は滅びてしまい
ます。今の医療費は65歳以上が5
5%
を使っています。
2025年には医
療費だけで5
6兆円
にもなるそうです。

ヘルシーエイジングとマクロビオティックの共通点

この問題は国に任せず、国民の努力で減らさないといけません。
答えは簡単。「病気にならない」ことです。これからは治療ではなく予防なのです。つまり、医者を失業させないとこの国は終わってしまいます。失業といっても全員ではなく、本当に病気になった時に必要なお医者さんだけいればいいということです。そんなに難しくはありません。
皆さんが病気にならずに病院へ行かなくなればいいのです。そのためにどうすればいいかを考えていくべきなのです。
例えば老化です。老化は予防できませんが、歳をとっても元気でいることはできます。僕はそれを「ヘルシーエイジング」と言っています。
老化には色々な学説がありますが、錆と考えれば酸化を抑えることは重要です。また、歳と共に代謝が落ちます。熱も作れなくなるから体の冷えが進むことになります。代謝をアップさせるために、冷え対策は効果的です。
ヘルシーエイジングはマクロビオティックと多くの共通点があります。マクロビオティックとは「大きな生命」という意味です。つまり健康長寿学です。ヘルシーエイジングの考えと同じです。
マクロビオティックは食事に限ったことではなく、食事を中心とした健康長寿学です。生活習慣に関しては「しっかりと咀嚼しましょう」「食べ過ぎず、糖に注意しましょう」「たばこはダメ。お酒は少量、ストレスに注意しましょう」「睡眠・休息を充分にとって適度な運動をしましょう」と言っていると思います。食事単独ではなかなかうまくいかないこともすべて網羅されていますから、これはとてもいい健康法です。
僕は、予防のための「あいうえお」というのを提唱しています。「あい」は愛です。「う」は運動、「え」は栄養、「お」が温活です。
冷えとりを「温活」、食事を「栄養」
にすればいいと思います。この4つの柱をやっていけば、病気が予防できると思います。
体の細胞は入れ替わる
私たちの体は、細胞が毎日入れ替わっています。神経細胞もたんぱく質レベルで入れ替わっているし、腸の絨網(じゅうもう)は一日で入れ替わってしまうくらいです。だから小腸にはがんができないのでしょうね。
一番時間がかかる骨でも、それがたとえ70歳を超えた人の骨であっても約3年で細胞が入れ替わってしまうのです。ということは、3年で人間の細胞全部が入れ替わってしまうのです。つまり、どんなに悪い細胞でも入れ替わっていくので、正しい細胞を作ってあげれば3年で治らない病気はないともいえます。これが食事療法の意義になってくるのだと思います。
日本人の死因のトップはがんです。そして、がんによる粗死亡率は増えています。僕が在籍していたハーバード大学の資料では、1996年に出されたアメリカ人のがんの原因として挙げられているものは喫煙30%、食事と肥満30%、座業の生活様式5%、職業要因5%で7割になります。つまり、がんは生活習慣病なのです。
WHO(世界保健機関)が発表した「がんの発生とリスクとの関係」では、リスクを下げるものが運動、野菜・果物、それからオメガ3とか必要なアミノ酸や脂肪、ビタミン・ミネラルです。逆にリスクを上げるものが過体重・肥満、酒、塩です。動物性のたんぱく質は発がん物質に変わります。
アメリカでは1977年に「マクガバンレポート」が発表されました。それには「現代病は食源病である」と
断じてあります。
このレポートによって、アメリカでは食をガラッと変えようという動きが始まりました。レポートの終わりには「理想的な食事をしていると
ころがある。それは日本だ。日本の元禄以前の食事が理想である」と書いてある。まさに一汁一菜の時代だったと思うのです。それを理想的な食事としてアメリカは取り組み始めたのです。それを元にフードピラミッドを作りました。
肉、卵などの動物性は月に1〜2回(5%以下)、魚介類、フルーツは週に1?2回、毎日摂るのは未精製の穀類、野菜、発酵食品、海産物を少しと大豆のたんぱく質です。この影響か、アメリカは1990年にがんのピークを迎えた後から数字が落ち、今でも減り続けています。それに対して日本は増えている。どうしたらいいのでしょうか。
マクロビオティックには「身土不二(しんどふじ)
(旬の野菜を食べる)」というものがあり、食物の陰陽表があります。食べ物には陰と陽があり、肉類は陽性だけど避けたほうがいいというものです。そういったマクロビオティックの考え方が日本に必要だと思います。
栄養素が減るということ
現代の食事には問題があります。例えば、にんじんのβーカロテンは1950年を100% とすると、1982年には30%まで、2000年には12%まで減っています。測定方法が違うので一概に言えませんが、素材そのものの栄養素が低下しています。
また、煮る、炊く、蒸すことも栄養素が下がります。だから生野菜を摂れとは言いませんが、栄養素が減るということを念頭に置いていただきたいと思います。
アメリカから入ってきたのは、脂肪と動物性のたんぱく質と砂糖です。減っているのはビタミンやミネラル、食物繊維。これが現代食なのです。現代の食生活は三大栄養素、特に動物性のたんぱく質や余計な脂質、糖質、塩も摂り過ぎというくらい摂っている可能性があります。
逆に摂れていないのは米です。オメガ3やレシチン、植物性たんぱく質、ビタミン、ミネラルやファイバーも摂っていません。ビタミンやミネラルは食品から摂ることができます。
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※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。
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